導入事例(J-CCOREs)

東洋紡株式会社 様

作成者: JMT|2022/30/00

東洋紡の業態

東洋紡の事業内容について教えてください。

明治の実業家渋沢栄一によって設立された日本初の大規模紡績会社「大阪紡」が1914年に「三重紡」と合併してできたのが「東洋紡」です。創業時は衣料繊維の製造を行っていましたが、長い歴史の中で高機能素材メーカーに発展しました。
現在は、食品包装用や工業用のフィルムなどを製造するフィルム事業を中心に、自動車に用いられるエンジニアリングプラスチックやエアバック用の基布などを製造するモビリティソリューション事業、消防服や耐切創防止手袋などの高機能繊維などを製造する生活・環境ソリューション事業、診断薬や医療機器を取り扱うライフサイエンスソリューション事業を行っています。
それぞれの製品を国内16工場で製造しており、従業員数は10,503名(連結 2022年3月末現在)、売上高は375,720百万円(連結 2022年3月期)です。

J-CCOREsの活用法

J-CCOREsの活用状況について教えてください。

東洋紡では、J-CCOREsの計画原価計算、予算外品計算、実際原価計算、個別原価計算、差異分析、損益計算、所要量展開、フルシミュレーションを活用して新たに原価計算システムを構築しました。
2022年4月から本稼働しており、本社、国内16工場と1子会社で活用しています。月間受払データは15万件、200名以上が使用する全社共通原価計算システムとなっています。

【システム概要図】

J-CCOREs導入前の課題

原価計算システムを導入された経緯について教えてください。

従来は、30年以上前に構築されたホストコンピューターで原価計算システムが稼働していました。成り立ちの違う綿紡績と化学繊維の工場、さらに本社でも別々の原価計算システムを使っていたため、3システムが併存する状態でした。

このことから以下のような課題がありました。

1.システムのブラックボックス化

3システムはそれぞれ仕組みが違うため、システムごとに保守要員が必要となり運用負荷が高くなっていました。また、長年の運用でロジックがブラックボックス化しており、事業環境の変化、ユーザニーズに対応しきれていませんでした。

2.柔軟性を欠く運用

決算では3システムの夜間バッチを順番にスケジュールして計算を回していました。そのため計算エラーが見つかったときでも直ちに計算し直すことができず、ひとまず下流システムでデータを調整するなど、解決までに時間を要していました。

3.作業負荷が高い、データ分析の精度が低い

工場のシステムによっては予算データを全て手入力しなければならず、2人掛りで丸3日を費やしていました。
また、データ分析するためにBIツールを使ってデータを収集していましたが、必要な項目が全てのシステムにあるわけではなく、紙ベースの帳票にしかないこともありました。データがあってもシステムごとに粒度が異なっていることも多々あり、同一の指標で計算するために手間がかかっていました。

これらの課題を解決するため、ホストコンピューターから切り出し、新たに全社共通の原価計算システムを再構築することにしました。

原価計算システムの導入要件
~配賦計算が細分化できる等の3つの条件で比較・検討

原価計算システムの製品はどのような条件で選ばれましたか。

以下の3つの条件で3製品を比較・検討しました。

1.配賦計算が細分化できること

東洋紡では多数の商品群を取り扱っており、同じ商品でも異なる工場やラインで製造しているものもあり配賦計算が細かく分かれていました。それらの実態をきちんと原価計算に反映できることは必須でした。

2.原価差異分析が細かくできること

システム刷新は、前述のような課題解決が目的でしたが、課題解決と同時に、原価低減のために原価分析をしっかりとやりたいと考えていました。そのため、事業別・製品別等、細かく設定して差異分析ができる製品であることを希望しました。

3.ホストコンピューターと連携ができること

上流の生産管理などはそのままホストコンピューターで行いますので、インターフェース連携でデータのやりとりができることも条件としました。そのためホストコンピューターとの連携に知見があるベンダーに依頼したいと考えていました。

これらの要件で比較検討した結果、最も要件を満たしていたJ-CCOREsを採用することにしました。

J-CCOREs、JFEシステムズのどのような点をご評価いただきましたか。

東洋紡の基本構想では、3年かけて国内16工場と1子会社へ段階的に導入することを計画していました。他社からは基本構想に沿った提案がきましたが、JFEシステムズからは、1年前倒しでの一括導入を提案されました。段階的な導入は過渡的なシステム対応が発生しコストがかさむ上に、2年での導入が可能であるとの提案でした。当初は本当に可能なのか半信半疑であったため多くの質問をしましたが、いずれに対しても丁寧な回答があり、その実現方法も詳細に説明してもらえました。

機能面のフィットアンドギャップ調査においても、J-CCOREsは8割強と最も高く、アドオンが少なくすむと判断しました。

また、他の製品は開発元と導入ベンダーが異なっていましたが、J-CCOREsはJFEシステムズが要件定義から本番フォローまで一貫して担当いただけるとのことで、自社開発のアプリケーションはもちろんの事、原価管理の業務知識にも詳しく、安心して任せられると考えました。

導入効果
~原価計算システム統合により、業務の標準化・平準化が可能に

導入効果について教えてください。

全社共通の原価計算システムを構築したことで、以下のような効果が出ております。

1.原価データの一元管理を実現

従来3システムで管理していた原価データの一元管理が可能となりました。これまで難しかった工場別のデータも簡単に取り出すことができ、工場間の原価比較をすることができるようになりました。また、差異分析が細かくできるようになり、原価管理レベルが向上しました。

2.原価計算システム統合により業務の標準化を実現

システムが統一されたことで、東洋紡の原価計算の考え方が理解しやすくなりました。どの工場でも同じJ-CCOREsで原価計算が行われるため、全社共通の言葉、考え方で原価計算を行うことができます。工場間のコミュニケーションはもちろんの事、経理要員のローテーションも安心してできるようになりました。

3.業務の平準化が可能に

従来は、スケジュールをあわせて夜間バッチで月次の原価計算を行っていた関係上、計算エラーの修正作業は対応日を決めて集中的に実施する必要がありました。一方、J-CCOREsは何度でも計算ができるので、必要に応じて日中に再計算を行えるようになり、業務の平準化を図ることができました。

4.脱ホストの実現

長年課題となっていたホストコンピューターからの脱却を図ることができました。ブラックボックスも解消されたため作業効率が上がり、保守作業の負荷が軽減しました。

スムーズなプロジェクト推進のための工夫

大規模なプロジェクトをスムーズに進めるために、どのような工夫をされましたか。

工夫したことは大きく3つあります。

1つ目は、体制を整えたことです。基本構想を策定し方針を固めて、JFEシステムズとの窓口になる担当者を一本化しました。これによりスムーズにコミュニケーションをとることができました。

2つ目は、カスタマイズを可能な限り減らしたことです。とはいえ、東洋紡が想定していたインターフェース連携本数は約300本ありました。それをJFEシステムズに様々な観点から精査してもらい、最終的には十数本まで削減し機能アドオンも当初想定の5分の1以下に抑えることができました。

3つ目は、適切なタイミングでユーザ教育を行ったことです。全ユーザ向けの操作教育を、予算稼働、月次稼働それぞれの運用検証開始時期に合わせて複数回オンラインで実施し、のべ100名が参加しました。

JFEシステムズのサポートはいかがでしたか。

プロジェクト中もJFEシステムズの丁寧な姿勢は変わらず、詳細で分かりやすい資料を作成してくれたので、システムに詳しくない経理部員でもよく理解することができましたし、認識の齟齬も大幅に減ったと思います。課題については必ず複数の対応案を提示してもらえました。

本稼働後は、運用面での課題を密に共有しその都度迅速に対応を行っていただいたため、大きなシステムトラブルは無く安定稼働を果たしました。

今後の取り組みの予定とJFEシステムズに対する期待

今後の取り組みのご予定について教えてください。

まだ本稼働できていない見通しシミュレーション機能についても早期の稼働を実現したいと考えています。また、2023年4月から、三菱商事株式会社と機能素材分野での合弁会社が事業を開始します。合弁会社へもJ-CCOREsを導入する予定のため、本稼働に向けて準備を進めているところです。

JFEシステムズに対する今後の期待について教えてください。

現在、JFEシステムズは原価計算システムのチューニングを行ってくれていますが、手厚いサポートを引き続きお願いしたいと思います。また、東洋紡にフィットした製品があれば提案していただきいと思います。今後ともよろしくお願いします。

- お忙しい中、貴重なお話しをありがとうございました。

※実績紹介に記載された情報は取材時点のものであり、お客様の社名などが閲覧される時点で変更されている可能性がございますがご了承ください。

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