導入事例(J-CCOREs)

日清紡マイクロデバイス 株式会社 様

作成者: JMT|2018/31/00

日清紡マイクロデバイスの業態

日清紡マイクロデバイスの事業内容について教えて下さい。

日清紡マイクロデバイスは、リコー電子デバイス株式会社と新日本無線株式会社が統合して生まれた総合アナログ半導体メーカーです。車載機器・産業機器・民生機器に向けたオペアンプ、電源ICなどの電子デバイス事業と、レーダや衛星通信などのマイクロ波事業を展開し、様々な分野のモノづくりに貢献しています。長年培った技術をさらに磨き、音、光、圧力などのフィジカル空間とサイバー空間をつなげることで、高度なスマート社会の実現を目指しています。

J-CCOREs導入の経緯

J-CCOREsはどのように活用されていますか。

日清紡マイクロデバイス やしろ事業所では、J-CCOREsのベースモジュールに加え、標準原価計算モジュール、差異分析オプション、損益計算オプション、所要量展開オプション、フルシミュレーションオプションを導入し、活用しています。カスタマイズは、MES(製造実行システム)のデータ取り込みや管理会計の業績報告レポートなど最小限にとどめました。
予算実施時期の関係で2段階に分けて導入し、2018年1月から予算系システムが、2018年5月から実績系システムが本稼働しています。

新たに原価管理システムの導入を検討された理由を教えて下さい。

従来は、2002年に導入したERPパッケージをフルカスタマイズして原価管理を行っていましたが、システムが老朽化しており、サーバOSなど各種ソフトウェアのサポートも順次切れていくことが予想できました。機能追加は外注していましたが、長年追加を繰り返したためシステム自体が肥大化しており、対応できる技術者が限定され、迅速に機能追加することが難しくなっていました。

そして、マスタ定義が曖昧なものや未使用のマスタが多数ある状況で、周辺システムとの連携がうまく取れないことも重なり、運用の手間がかかっていました。

また、従来の原価計算システムでは、どの製品、工程で原価差異が出たのか分からず、業務改善に役立てることができませんでした。これらの課題を解決し、業績課題や改善活動の結果を見える化し、製造形態や製造工程の変化に柔軟に対応できるようにするため、原価計算システムをリプレースすることにしました。

システム概要図

原価計算システム導入の要件~半導体業界に適した製品であること

リプレースにあたっては、どのような条件で製品を比較検討されましたか。

以下の4条件で、3製品を比較しました。

1.半導体の原価計算モデルに合致すること

半導体は様々な工程を経て製造されますが、その原価は単純な部品コストの積み上げではありません。BOMを前提とした原価計算モデルではなく、半導体の製造実態に即したプロセス型の原価計算ができることは必須でした。

2.一般会計、MES、販売管理などのシステムと連携が柔軟にできること

原価管理は、業務で利用する他のシステムに格納されているデータを利用して行うため、他のシステムとスムーズな連携がとれることも必要でした。

3.カスタマイズは最小限に抑えられること

従来の原価管理システムの自由度不足の反省から、カスタマイズは最小限に抑えたいと考えていました。そのために、日清紡マイクロデバイス やしろ事業所が必要とする機能の多くが搭載されている適合度の高い製品を選ぶつもりでした。

4.運用のコストダウンを図れること

運用コストを削減するため、工程の変更や配賦基準の見直しなどの環境の変化に社内で柔軟に対応できること、そして、マスタのメンテナンスが少なくて済む製品を希望していました。

3製品の中で、上記4条件を最も満たしていたのがJ-CCOREsでした。また念のため、それぞれの製品のベンダーにプロトタイプを依頼しましたが、当社が求める完成度の高いプロトタイプが出来上がってきたのはJ-CCOREsのみでした。これらの理由から、J-CCOREsを導入することにしました。

プロトタイプを2度にわたって依頼

プロトタイプを依頼された理由は何ですか。

従来できていたことが新システムでできなくなることはないか等、基本的なことを確認するためです。製品のサンプルデータを使ってJFEシステムズに無償でプロトタイプを作ってもらいましたが、J-CCOREsでは品目単位でも旧システムと同等の算出結果が得られることが確認できました。

その後、本番同等の予算と実績の実データによる有償プロトタイプを依頼しました。目的は大きく分けて2つあり、1つは、原価差異が正しく細分化された形で算出されるかをチェックすることでした。もう1つは、長年にわたり機能追加を繰り返してきたためシステム構造を細部まで把握している人間がいないことから、事前に問題を把握し、プロジェクトの途中で想定外の問題が発生しないようにするためです。この2度目のプロトタイプにより、原価差異の原因の多くは旧システムのマスタ設定内容にあり、マスタ整備によって解決できることが明確になりました。

スムーズに新システムに移行できましたか。

今回、旧システムで管理されていた品目や構成、プロセスマスタなどをJ-CCOREsに移行する必要がありました。旧システムのマスタとJ-CCOREsのマスタとは、構造、ルールが異なっており、単なるマッピングでは対応できないため、JFEシステムズにマスタ移行用の変換プログラムを作ってもらい構築フェーズの早い段階からトライ&エラーを20回以上繰り返しました。実際に移行後の予算原価計算、実績原価計算を数か月分実施し検証する中で計算エラーや原価差異の異常値などを検知し、その都度、移行元のマスタデータを修正して作業をやり直しました。そのため、マスタの移行作業は想定していたより1カ月ほど時間がかかりましたが、それ以降は全体的にとてもスムーズに進み、当初の予定に遅れることなく本稼働を開始できました。

スムーズに進められたのは、JFEシステムズがシステムを利用する業務部門からヒアリングをして要件定義を正確に行い、要件定義の段階で見つかった課題に対しては定例ミーティングで都度、改善提案をして、本稼働までに解決できたからだと考えています。

 

導入効果~保守費用が半分以下になり、データの見える化も実現

導入効果について教えて下さい。

複数の効果が出ておりますので、定量、定性に分けてお話しします。

1.定量的効果について
(1)保守費用が削減できた

機能追加による外注の必要がなくなり、システムの年間の保守費用は半分以下になりました。

(2)システム投資額を抑制できた

旧システムをバージョンアップするコストに比べ、J-CCOREs導入コストは約半分でした。

(3)運用工数が削減できた

J-CCOREsのMRP(資材所要量計画)計算と標準原価計算の処理時間短縮によって事業計画作成のサイクルタイムが3分の1に短縮できました。また管理マスタ数の削減や管理項目の簡素化を実現し、製品構成情報(正展開/逆展開での照会)が容易に確認できるようになったため新製品登録の作業効率がアップしました。

2.定性的効果について
(1)データの見える化を実現

旧システムでは、毎月の原価差額で原因が分からない“その他差異”は合計約2000万円に上り、内訳も不明でしたが、現在は約100万円(周辺システムとの計算小数精度を合わせたことによる丸め誤差)まで縮小し、その発生原因や発生差異の製品分野も明確になりました。これまで大工程レベルの“どんぶり”把握だった原価差異が製品別、工程別に把握できるようになり、差異理由に応じた原価差額配賦による適正原価の管理、社内工程や外注工程管理における課題の把握、改善効果の確認が可能となりました。

(2)インプットチェックが可能となった

旧システムは受払データのチェック機能が不足しており、エラーチェックやエラーが出たときの対応に時間がかかっていましたが、現在はインプットチェックが可能となり、問題があっても迅速に対応できます。

社内でも本プロジェクトの取り組みが評価され、表彰制度において優秀なパフォーマンスを称えるRED賞を受賞しました。

JFEシステムズの対応はいかがでしたか。

JFEシステムズの技術担当者は、半導体業界の原価管理システムに対する知見が高く、半導体用語を使ってコミュニケーションをとることができ、打ち合わせはスムーズに進みました。

月2~3回、両社のプロジェクトメンバーで定例ミーティングを行いましたが、前述のように都度、課題に対する解決案を持って来てくれました。どのような対応が最善なのか私たちには分からなかったので、とても助かりました。また、検証も細部まで行い正確な数値を出してもらえたので、本稼働後も大きなトラブルはありませんでした。

今後の取り組みの予定とJFEシステムズに対する期待

今後のお取り組みのご予定を教えてください。

今回、マスタが整備され共有化できる状態となり、原価精度の向上も実現できました。次は“製品情報(原価や諸元データ)の共有化”活動により、社内共通データとして一元化管理し、さらなる業務プロセスの改善に活用していきたいと考えています。

今後のJFEシステムズに対する期待を教えて下さい。

J-CCOREsはメニューや帳票数が豊富にありますが、まだ使い切れていません。JFEシステムズには、J-CCOREsを使いこなせるようなサポートや、当社にあった使い方の提案をお願いしたいと思います。また、新基幹システムとの連携や設定見直しにあたっても、これまで通り親身になったサポートをしてもらえればと思います。引き続き、よろしくお願いいたします。

- お忙しい中、貴重なお話しをありがとうございました。

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