J-CCOREsの標準機能である個別原価計算(数量あり)、損益計算オプションをベースに、当社独自のアドオンを加えた月次原価計算システムを構築し、2017年8月から利用しています。
当社が製造する製品は、主に受注生産によって個別に生産するものです。
また、水位計等の汎用ユニット(計画生産品)を予め製造しておき、顧客仕様に合わせて組み立て、出荷するような製造形態を取るものもあります。受注番号・作業指示番号別の個別原価計算を基本としていますが、汎用ユニット(計画生産品)については、品目別の原価も捉えられるようになっています。受注生産品の製造プロセスと汎用ユニット(計画生産品)の製造プロセスを一連のフローとして捉え、計算しています。
原価計算システムのオペレーションは経理部門が行い、各事業部の営業部門や技術部門がBIシステム経由で原価計算システムのデータを活用して、売上分析や原価分析を行っています。
原価計算フロー
従来の原価計算システムは標準原価計算を用いていたため、特にリードタイムの長い計画生産品については実際にかかった労務費や材料費などの内訳を把握することができませんでした。
また、製品の品種ごとの販売費は計算方法が現状に合致しておらず、Excelを用いて手作業で算出する必要があり、作業負荷がかかっていました。
しかも、従来の原価計算システムは1989年にリリースされたもので、プログラムはCOBOLで書かれており、近年では保守も困難になっていく一方でした。さらに、使用できる管理コードの桁数には制約があり、業務で用いる桁数と乖離していたため、発生した費用が別の管理コードに紐付いてしまうなど、誤りが発生する原因にもなっていました。また、1,000円単為でしか計算できないため、管理会計は1,000円未満を切り捨てる仕組みにせざるを得ませんでした。
従来のシステムでできていた、個別受注品の原価計算や、間接費の予定配賦、売上原価への追加原価、一般会計との連携に加え、以下が実現できることを条件にしていました。
先ほどお話ししたように、従来のシステムではデータの精度が低く、経理部門としてもどかしさを感じていました。費用の内訳を正確に把握し、経営分析に役立てられるようにしたいと考えていました。
経理部門もシステム開発部門も人員に余裕がなく、システム導入のための専従者を置くことができませんでした。その為、通常業務を回しながらでも導入できるノウハウや経験を持ったベンダーの製品を選ぶつもりでした。
従来のシステムのハードウェアは保守期限が約1年後に迫っており、それまでに要件定義から構築、検証、リリースを完了させる必要がありました。
データ分析のためにBIシステムも同時に構築する予定でした。このため、計算結果をBIシステムへ連携できることは必須条件でした。
これらの4つの条件で3社のパッケージ製品とスクラッチ開発を比較検討したところ、J-CCOREsが最も条件を満たしていました。また、J-CCOREsは原価計算システムに特化しており、統合パッケージ製品のように使わない機能に余分なコストを費やす必要がないことも評価し、J-CCOREsを採用しました。
JFEシステムズの技術担当者とコミュニケーションを密に取り、手戻りをなるべく減らすようにしました。例えば、製造過程で起こりうるイレギュラーな受払処理について、その詳細を事前に伝え、技術担当者に理解してもらうよう努めたり、時には想定する計算結果を具体的に提示したりすることで、認識の齟齬が生じないようにしました。
JFEシステムズの担当者には、定期的な対面での打合せの他、当社内の打合せにテレビ会議で参加してもらいました。更に社内の要望を取りまとめるため、部門ごとの打合せも実施し、全打合せ回数は50回を超えました。
システム概要図
大きく以下の3つの効果が現れています。
従来は、複数のシステムから内訳データを取得して集計していましたが、新システムではレポート機能を使用することで、1回の照会でデータを取得でき、集計作業も不要になりました。また、以前は必要なデータがシステム上にないともあり、そのような場合は推定してデータを作っていましたが、その作業も不要となりました。これらの工数削減分を計算すると年間で約1,500万円にもなります。
月次原価計算の速度がアップしたことにより、データ修正に伴う再計算の作業負荷もなくなり、作業時間を5パーセント短縮することができました。
生産段階の全ての要素別費用を明確にしたまま処理を進められるので、データが精緻化し、在庫の原価を材料費、労務費、経費などの要素別に把握できるようになりました。そのため、来期予測や損益分析の精度も高まり、適切な対策を講じることが可能となりました。このことは経営層からの評価も高く、昨年はトピックの1つとして原価計算システムが取り上げられ、社内業績表彰で「金賞」を受賞しました。
生産管理システムに実際原価の情報を日次で連携することにより、生産管理の分析の幅が広がりました。また、BIシステムを通してマスタ・諸元・計算結果等の情報を公開することにより、経営層を含め社員が広く情報にアクセスできるようになり、様々な観点からの分析が日々可能となりました。
また、これは副次的な効果ですが、従来のシステムが30年ほど前のものだったこともあり、周辺システムは様々な制約を受けていました。それらがJ-CCOREsの導入によって解消され、マスタや帳票類の整備が進んだことも大きかったと思います。
JFEシステムズの技術担当者は、短い開発期間の中、当社の特殊な処理を理解し、それをシステム化してくれました。あの説明で、よく作り上げてくれたなと感心するほどでした。原価計算について知見が豊富だからこそ、可能だったのだろうと考えています。
今回導入した月次原価計算システムに加え、J-CCOREsの計画原価計算モジュールも導入できればと思っています。営業部門や製造部門など、経理部門以外の要望を吸い上げ、他部門にとってもメリットが享受できる仕組みにしていきたいと考えています。
分析の精度を今以上にアップしたいと考えています。そのため、JFEシステムズには、さらなるレポート機能の充実をお願いできればと思います。また、他部門に広げて行くためにも、経理担当者以外の人が使いやすい環境を整えてもらえると助かります。今後ともよろしくお願いいたします。
- お忙しい中、貴重なお話しをありがとうございました。
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